今週は水曜日にがん研究会研究所の原英二先生、木曜日に虎ノ門病院の熊田博光先生にお越しいただき講演をお聴きしました。原先生の細胞老化とがん発生の講演は非常に示唆に富んでおりました。細胞が老化して細胞周期停止に入ることは不要な細胞の増殖を許さない生体の防御機構な訳ですが、それがかえって炎症反応を持続させてしまうということは正に諸刃の剣であり、高齢者にがんが多いという事を分子論的に示しています。我々の研究に利用させていただける情報が多く参考になりました。
木曜日の熊田先生の講演は正に圧巻でした。毎年1度お越しいただいておりますが、今回は熊田先生ご自身、今持っているデータ全て出す、と仰っておられましたが、どのスライドにも驚愕し、C型肝炎を撲滅できる治療法満載の講演で多くを学びました。それと同時に、熊田先生が何度も「やってみないと判らない、頭の中で考えていても、データがないと真実でない」という意味あいのことを何度も仰った事は非常に納得ができました。そうです、我々医師は自然科学と向き合っているわけであり、事実と真実に基づいて論理形成をしないとそれは科学ではありません。臨床をしていると、基礎研究をしたり論文を書いたりする事を「臨床が忙しいからできない」と言う人がいますが、それは逃げ口上でしかないと明言したい。人の病気、人の生死と向き合っている医師には、事実を観察して謙虚にそれを世に報告する姿勢が必要であり、また、それは義務であると私は考えており、これを曲げるつもりなど毛頭ありません。これを日常的に行うのが大学などの基幹病院であると思います。即ち、大学病院などの高度な医療を行う病院の勤務医は、最先端の情報に身を曝しつつ、自ら得た情報を解析・解説して報告し社会に還元することを仕事と認識する必要があります。それは、日本国内に対してのみならず、国際社会に向けてもそうです。これこそが言わば独占的に医師が人類の福祉にできる社会貢献です。医師はもっともっと社会貢献できる仕事である事を若手医師には判って欲しいと思います。
今日の土曜日は「関西Liver Club」といって、大阪大学の竹原先生、三善先生とともに昨年から立ち上げた関西の若手の活性化を図る会を行いました。今日は各大学から報告された研究内容はどれも素晴らしく、非常に刺激的な会となりました。この会では会費の中から奨励賞を貰っていただいており、来年度も多くの発表を期待したいと思います。
というわけで、今週は充実した1週間でした。